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最高裁判所第三小法廷 昭和27年(オ)196号 判決 1954年12月14日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人小原一雄の上告理由は末尾添付の別紙記載のとおりであるが、原審の認定した処によると上告人は何等相当の事情もないに拘らず、他に情婦を持ち妻たる被上告人を遺棄して情婦と同棲し、これにより夫婦生活の破綻を生じたのであつて、右破綻は一つに上告人の右背徳行為に基因するものである。民法第七七〇条一項第五号は相手方の有責行為を必要とするものではないけれども、何人も自己の背徳行為により勝手に夫婦生活破綻の原因をつくりながらそれのみを理由として相手方がなお夫婦関係の継続を望むに拘わらず右法条により離婚を強制するが如きことは吾人の道徳観念の到底許さない処であつて、かかる請求を許容することは法の認めない処と解せざるを得ない。されば原判決も結局右と同趣旨に出たものであつて正当であり論旨は理由なきに帰する。なお原審の認定しない事実を前提とする論旨は上告の理由とならない。

よつて民事訴訟法第三九六条、同第三八四条、同第九五条、同第八九条に従い裁判官一致の意見で主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 井上登 裁判官 島 保 裁判官 河村又介 裁判官 小林俊三 裁判官 本村善太郎)

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